客を選ぶ
とある住宅メーカーが建てる賃貸マンションを見学に行ったことがある。
年商は業界トップのメーカーで、地主からの信頼が厚いという。
賃貸マンションは、また戸数が多いわけではないので、すぐに埋まるほどの人気。
分譲マンションレベルの工法で、住みたいな〜と憧れた。
そのメーカーは、客を選んでいるそうだ。
毎月の家賃は高めに設定し、管理している不動産会社も絶対に値段を下げない。
だから、家賃を払うことで精一杯という人よりも余裕のある暮らしの人が住むそうだ。
ぜひ契約してください!という姿勢はなく、住みたい人がいっぱいいますからね、という姿勢は変えないという。
こうすることで、家賃の取りっぱぐれがまず起こらないそうだ。
憧れだけで家は借りられないから、ゆったりと毎月払える人だけが契約してくださればそれで良いんです、金銭的に余裕がある人は絶対にいるんだから、と言っていた。
その業界で苦戦しているメーカーも同じように分譲レベルの豪華な賃貸マンションを売りにしているが、一日でも早く空き家が埋まってほしいからと、契約を急ぎ、結果的に家賃滞納が続くんだとか。
お客様は神様だが、その神様を選ぶ権利が、商売する側にはあると私は思う。
だから、入居してほしい人が現れるまで貸さないという姿勢は良いとおもう。
高慢だとも思わないし、賢い。
金銭的に余裕がある人が入居することで、「あのマンションはお金持ちが多い」と、ステイタスに感じてもらえるし良いことずくめだ。
今は郊外の使っていない土地を中心に賃貸マンションを建設しているが、早く都市部にもできると良いな。
オートロックなるもの
最近のマンションやアパートには、オートロックの物件が増えたものだと思う。
見た目からしていかにも安全そうである。
ロビーの玄関からしっかり戸締り管理されているというのは、一人住まいには最高だ。
けれども私はおそらくオートロック物件には住めないだろう。
大分前、旅行に行った。
ビジネスホテルみたいのだった。
そこで初めて、私はオートロックなるものを見た。
カードキーをかざすタイプ。
万一キーを忘れて外に出てしまったものなら、フロントまで行ってあけてもらわなくてはいけないというもの。
今まで、オートロックなんて噂にしか聞いたことがなかったし、そんなもの金持ちしか用はなかろうと高を括っていた。
まさかこんなビジネスホテル然したところにまで普及していようとは。
けれども使い方なんてよく分からないし、普通の鍵を回してあけるタイプのホテル感覚で、うっかり何も持たずに部屋を出てしまった。
背後で閉まる扉と、後から聞こえるかすかなロック音。
しまったと思った。
うっかり、パジャマで出てしまった!
なんて後悔をしても遅いのだ。
それがオートロックである。
私は情けないパジャマのまま、すごすごとフロントに行って鍵を開けてもらった。
とても恥ずかしかった。
もっと恥ずかしいことに、連続でもう一回同じことをした。
もう一度すごすご行ったフロントのことなんて恥ずかしすぎてもう覚えていない。
だから、オートロックは私にとっては嬉しくない思い出なのである。
そんなところに住むとなると、「万一鍵を忘れて出たら」がシャレにはならない状況になることが目に見えている。