夜の道の駅
何かトラブルがあると必ず連絡してくる親友のユミ。
今回は彼氏に振られたと号泣しながらの電話だった。
あまりに辛そうで放っておけなくて、深夜にも関わらずすぐ車で会いに行った。
ユミは憔悴。
しばらく当てもなくドライブしながら話を聞いていたけど、急に「道の駅に行きたい!」って言いだした。
えー!ここからは車でも1時間かかる。帰りの時間も考えたらさすがにちょっと遠慮したい。
でもどうしても行きたいらしい。仕方ない、今日は目一杯ワガママを受け止めよう。
街頭1つない山道をずいぶん進んだ所にある道の駅。もちろん売店は閉まっているけど、駐車場と何台も並ぶ自動販売機は利用できる。
ユミ曰く、このガランとした雰囲気に癒されるんだとか。自動販売機でコーヒーを買い、そのコーナー内で飲みながらゆっくり話を聞いていた。
そうしているうちに、駐車場に新たな車。出てきたのは、ダボダボのスウェットにボサボサ頭のスッピン女性。そして自動販売機コーナーへまっしぐらに走ってきた。ボソボソと独り言を言いながら飲み物を買おうとしている。
正直ちょっと怖かったけど、興味本位で耳を澄ます。どうやら「くそ!くそ!別れるとかふざけんな!」と言っている。
この人も失恋ドライブ?ユミに比べたらひどく興奮している。
しばらく観察していると今度は電話をかけ始め、「テメー本当に別れる気か!?」と怒鳴り出した。見ているうちに面白さすら感じてきた。ユミもすっかり自分の失恋がどうでもよくなったようで笑い始め、とりあえずホッとした。
その瞬間、「ガサガサーッ」「ベチャッ」と大きな音。スッピン女性が持っていたハンバーガーを、怒りに震えながら地面に叩きつけるように投げていた。
夜の道の駅って怒りや悲しみを思う存分発散できるのかな。意外な発見で面白かった。