結婚式に聞いた主人からの言葉
結婚式の日のことは忘れてしまいたい位、しくじりだらけだった。
緊張と疲労とで、頭が全く動かない。
そんな中、どんどん式は進んで行く。
挙句の果てに、最後のお色直しの時に着ようと思っていたドレスが緩すぎる。
どうやら式直前、私はかなり痩せてしまいドレスがびっくりするほどゆるゆるになっていたのだ。
そこはへんは、プロの美容師たちが応急処置をしてくれたので何とか大丈夫だったのだが、こんなこともあるのかと、あの時ばかりは痩せてしまったことを後悔した。
今ならあり得ないことなのだが。
そんなこんなで進んで行った自身の結婚式。
最後の新郎からの挨拶で、主人はとんでもないことを言った。
「一目ぼれでした」と。
この私にである(笑)
主人もそうとう疲れていたのだろう。
それとも、緊張しておかしくなってしまったのだろうか。
こんなたくさんの人の前で、こんなに正々堂々と彼はそれを言った。
もう10年以上も前の話しなのだが、時々それを思いだす。
自分の主張など全くしない人なのに、その時だけは驚いた。
見た目にコンプレックスを強く持っていて、それゆえに消極的な生活をしてきたのに、こんなことを言われたら私は益々態度のデカい女になるではないか。
主人の女性の好みは本当ユニークだ。
始めて会った時、私を見てこの人と結婚するのだと確信したらしい。
私は全く何も感じなかった。
キツイ性格の私に挑戦状をたたきつけるなんて、なかなか勇気のある男だ。
忘れたふりをしているのだが、本当に嬉しかった主人の一言である。
一生忘れることはないだろう。
母から買ってもらった着物
きものを着る機会があまりないので、わざわざ用意する必要はないと母に伝えました。
あれは結婚が正式に決まり、その準備に忙しくしていた頃の話しです。
経験してみて初めて分かったことなのですが、働きながら結婚の準備をすることはとても大変です。
仕事も責任がありますし、結婚式の準備だってやること決めることが山ほどあるのです。
そんな中、母からきものの相談をされたこともあり、私は少々イライラしていたのかもしれません。
本当に必要かどうか分からないというのに、わざわざ大金を出して時間をかけながらきものを買うなんて正直面倒くさいなと思ったのです。
しかし、母も絶対に譲らずどうしてもきものを買いたいと言います。
私は母の熱意に負けて一緒にきもの屋巡りをすることになりました。
何度も、今の時代はきものを着ることはそんなにないんだよと言いましたが、いざと言う時に困ると母が言います。
そんなにお金や生活にゆとりがないことを知っていたので、無駄な買い物はさせたくない気持ちもありました。
こんなにまで頑なに、気持ちを曲げない母が不思議にも見えました。
結婚して10年以上が経つ今、やはり一度も買ってもらったきものを着ることはありません。
それでも、教えてもらったように丁寧に手入れはしています。
結婚直前、「これはお母ちゃんのやりたかった夢だ」と、母がぽつりと言いました。
「いつかお前が年取った時に、このきものを見てお母ちゃんを思い出してくれれば良い」と言ったことが、今も無性に寂しく心に残っています。
このきものはそんな特別なきものです。