夜の世界

うちの実家は自営業をしている。
両親二人だけで営んでいる小さなラーメン屋さんだ。
私が子供の頃はわりと景気がよかったようで、お客さんもひっきりなしに入っていたし、
地元の情報誌にも何度か載ったりしていた。

それが、私が高校生くらいの頃から、近隣にチェーン店のラーメン屋さんが立て続けに3軒オープンし、
両親のお店はダイレクトにその煽りを受けることなった。
3人兄弟の長女である私は、なんとなくではあるが両親のお店が危機的状況である事は理解できていた。
だから、大学進学と同時に一人暮らしになっても仕送りはほとんど受け取らず、
コンビニでアルバイトをしながらなんとか生活をしていた。
大学ではすぐに友達ができ、その中でも一番気の合うK子とは、毎日のように一緒にいた。
毎日カツカツの生活をしている私とは対照的に、ブランド物の洋服やバッグをいつも身につけていたK子。
ある日、ホステスでアルバイトをしているんだとカミングアウトされた。
そして、コンビニなんかよりも楽に稼げるからと誘われ、単純な私は誘われるままに夜の世界に足を踏み入れることになった。
今でこそ我ながらしたたかな女だなぁと思うけど、当時の私は男性ともまともにお付き合いしたことがなく、
清純そのものだった。
それが逆におじ様にはウケがよかったようで、出勤すれば必ず指名をもらえるようになった。
客層は、自分の父くらいの年上の方がほとんどだったため、最初はお客様を父親のようにしか思えなかったのだが、
そのうち、落ち着いていて懐も広い年上男性の魅力にどっぷりはまることとなった。
そうなると、お給料も良いしチヤホヤしてもらえるし、出勤するのもどんどん楽しいとすら感じるようになっていた。
一度年上男性にはまってしまうと、大学や合コンで出会う同年代の男の子にはさっぱり魅力を感じなくなってしまった。
どうしても、年上のおじ様と比べてしまい、彼らが子供に思えて仕方ないのだ。
経験値が違うのだから当たり前だと頭ではわかっていても、心が反応しなくなっていた。
今お付き合いしている彼氏も、お店で出会ったバツ1の50代の男性だ。2回り以上歳が離れている。
そのうち自分に結婚願望が芽生えたらどうなるのだろうとたまに不安に思うことがある。
こんな恋愛ばかりしていて私は結婚できるのだろうか。
そろそろ将来を考えられる相手を見つけなければいけないのだろうかと、心の中で葛藤中だ。

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